歪曲された電子音空間【DEKEL】
サイトランスの重要なパラメーターとして「曲げ」という概念があります。アシッドとピッチシフトをふんだんに活用した曲げは、ゴアトランスでは頻繁に用いられました。今回紹介するDEKELは、その曲げという表現を現代サイトランス的に昇華させているアーティストです。
DEKELとは?
DEKEL(ディケル)、本名Dekel Kamioskyは、名門レーベル「HOMmega」に所属するイスラエル出身のアーティスト。2013年に同レーベルで活動するGorovichとともに「Empirikal」を結成して活動開始、その後2017年にDEKELとして個人での活動も開始しました。
彼の作品の特徴は完成度の高い歪みです。使っているサウンドはもっぱら電子的なのですが、それでも妙に歪んだ土臭い表現を作り出します。うねりのあるベースライン、絶妙な粗暴性や浅さのあるシンバルの挿入・停止、そして、BPMとベースラインの進行速度の感覚的なズレ。上層音の使い方に関しても、ゴアトランスやハイテクサイケにも通じる良さがあります。色々な意味でかなり異質・多様なアーティストです。
それではオススメの作品を見ていきます!
DEKEL - Technoaid
DEKEL個人としてのデビュー作EP「Initiation」より。この曲、従来のサイケデリックトランスとは一線を画しています。
まずはベースライン。基本的なサイトランスのベースラインのどれにも当てはまらない、変な音程の動きがあります。ベースラインを聞く限り決して速い曲には聞こえませんが、拍を取ってみるとBPMはかなり速い。遅いのか速いのかよく分からない。でも、のれる。不思議です。
さらに、使っている音そのものは電子的な音ばかりですが、奥行き感・響かせ方・うねらせ方で、妙なクセを生み出しています。そのクセの持続力もすごい。クセをクセで塗り固め、曲全体として非常に高い完成度を実現しています。これは名作。
DEKEL - Twister
上のTechnoaidと基本的に同じ曲展開ですが、この曲ではDEKELならではの「臭さ」が強化されています。例えばDEKELは「ボーボーバーボー」といったようなクセの強いベースラインを好んで使います。これを使いこなすアーティストは現時点では彼以外にいないと思います。彼のトレードマークです。
また、DEKELの表現にはゴアトランス的な臭さもあります。曲の冒頭部分は、ピッチシフトで階段を上り下りするような音遊び。4:40頃からはアシッド的で強い曲げがかかったメロディーを挿入。いずれもゴアトランスっぽいですよね。
Captain Hook - The Power of Now (DEKEL Remix)
原曲のボーカルやメロディー・展開をかなり尊重したリミックス作品。原曲もかなりクセが強いですが、DEKELの手が加わることでそのクセの強さが一層増幅されています。例えば、曲中で時折鳴り響く金属の風鈴のような音。原曲では一度しか鳴らされませんが、DEKELはディレーを効かせることでアクセントとしての存在感を格段に向上させ、自身の表現として昇華させています。
原作の中にDEKEL自身の個性的なスタイルを完全にマージさせています。これぞまさにシナジーと呼ぶべきでしょう。
DEKEL & Originals - Reflect
同じくHomMegaの新人であるOriginalsとのコラボ作品。全体としてはDEKELに寄せた作品のように感じます。3:06あたりまではDEKELを尊重した深いキックと粘着力のある音づかいによる展開。そこからはOriginalsらしい鋭い金属音を多用した上層音を添加しています。両者とも新しいサイケを切り拓く新進気鋭のアーティストなので、このようにコラボしてくれるだけでも私としては嬉しいんです。
いかがでしょうか?
まだ活動を始めて1年少しというルーキーですが、これからが非常に楽しみなアーティストです。新曲が出たら随時この記事も更新していきます!
DEKEL好きの方にオススメ!