【2020年版】サイケデリックトランス・ゴアトランストラック20選!
どうもPsykeです。前回公開したオススメアルバム10選に続き、オススメのトラック20選をまとめました。早速いきましょう!
20.Smilk - Crooked (Gumnut Remix)
Smilkは独自のスタイルで根強い人気があるアーティストです。Gumnutの作風はSmilkと似ている*1印象があったので、その辺りがどのように表現されてくるか、楽しみにしながら聴きました。全体的に閑かで、電子音が主体で構成されているにも拘らず、どこか有機的で温かみがある空間が出来上がっています。
19.Lost Shaman - Afterthoughts
Lost Shamanはかなり固いサイケを作るアーティストで、低音をほぼ変えずに曲を作りきることができる*2アーティストです。いつもそういう期待をしながらLost Shamanの新作を聞くのですが、裏切られることはあまりなく、信頼して聞くことができます。この曲は一定のメロディー性を有しつつもLost Shamanらしい定常性もあり、ここでメンションしておくべきと判断しました。
18.Owntrip - Circles
Owntripは色々なところで見かけてきましたが、これといった作品がなくて掘っていないアーティストでした。この作品はクラシックな仕上がりが逆に新鮮に映りました。こういういわゆる王道っぽい作品に戻ってきたいなと思いつつ、最近主食がプログレッシブなスタイルに偏りがちなんですよね。Owntripがその一気に引き戻してくれるアーティストだといいなと期待しつつ、今後掘っていこうと思います。
17.Bohemica - Reverie
2009年以降活動を停止しているKhetzalのレーベルAvigmaticのコンピレーションから厳選した作品をDacruがリリースしました。美しいピアノのイントロからフルオンチックな展開で持ち上げていき、展開も直線的で実に確実です。捩れるように変化していく上層音、それに合わせて変化し始める低音。チラ見せからのブレイク、再点火まで、見事にまとまっています。綺麗な文章を読み終わった後のような聴後感です。
16.Hellquist - Eterni
最新アルバム「Rigged」より、しっかりしたミニマルサイケデリックトランスです。低音の立体感、上層効果音の斬り込みなど、文句なしの良作ではないかと思います。16bitでは勿体ない、24bitで聞くのがふさわしい作品ですね。Hellquistはあまり特徴を掴めていなかったアーティストですが、注目せざるを得なくなってきました。
15.Static Movement & Invisible Reality - Linoy
Static Movementはプログレッシブなサイケ*3に、Invisible Realityは最近マグネティックな作風に挑んでいる印象があったので、彼らのコラボレーションがどういった結果を見せてくれるのか楽しみにしていました。曲全体としてはStatic Movementが強く、ベースラインもどこか柔らかくて中性的になっていますね。
14.Roger Rabbit - Natural History
真面目なサイケ*4を作るアーティストユニットRoger Rabbitから、少し遊び心のある作品が出てきましたね。トライバルな効果音・サンプルと、IONOならではの中音系メロディーが交錯して、濃厚な音響空間を作り出してくれています。メロディーの低音域がベースラインと混ざり溶け合っていくのがすばらしいですね。高評価です。
13.Ascent & Argus - Hang Out by the Fire
Ascentの最新アルバムDeep Blue Seaより、ダウンテンポサイケです。タイトルにもありますが、曲全体に焚き火の音が散りばめられており、メロディーの隙間からその音が漏れてくるのが興味深い作品です。夜中の焚き火の上に少しずつ星空が現れてくるような高揚感。後半にかけて徐々にハーモニーが台頭してくるのもお洒落ですね。
12.Kundalini - Kanpai
日本が世界に誇るサイケレーベルMatsuri Digitalからのリリースです。Kundaliniは同じく日本のレーベルである604 Recordingsのアーティストの印象が強かったのでちょっと驚きました*5。この曲の面白さはやっぱりベースラインの浅さ・薄さじゃないかと思いますね。低音域はキックに任せてベースはリズム刻みに専念させたような、メリハリのある住み分けが面白いです。
11.Phanatic - Crystal Clear(Static Movement Remix)
IONO系プログレッシブサイケらしい柔らかさと存在感のあるベースラインで滑らかに展開していきます。メロディー力は以前から素晴らしいのですが、ベースラインをギャロップからオフビート、そしてトリプレット、さらにフルオンのそれへと滑らかに変化させていくStatic Movementの手腕は、やはりすごいと言わざるを得ません。Static Movementは去年、自身のレーベルSol Musicを立ち上げたばかりです。サイケの新しい流れを作っていってくれると面白いですね。
10.Neurolabz - LV-426
NeurolabzはZenon勢の中でもかなり強烈な低音を用いるアーティストである印象を持っていました。正直に言うとそれ以外に特に印象はなかった*6のですが、このEP「Breakthrough」で何かを掴んだんじゃないか?って気がしますね。サイケデリックトランスの一種の暴力性とZenon勢ならではの技巧力が互いに高め合っている感じがします。
9.Transponder - Terminae
アンビエント・サイビエントのレーベルとして定評のあるSynphaera RecordsのサブレーベルExosphereからのリリース。レーベルの特徴でもありますが、圧倒的な空間深度が魅力です。個人的に一番刺さったのは、2:30過ぎで一度曲を断ち切ってから再始動する箇所です。トランスファン的には許し難い展開なのですが、これはなぜかとても聴いていて気持ちよかったですね。Exosphereからこういった作品が出てきたのはちょっと意外でした*7。
8.Skizologic & Tsuyoshi Suzuki - Boom Eternity
Tsuyoshi Suzukiは日本を代表するサイケアーティスト、Skizologicはうまいマグネティックサイケを数多く出してくれているので、期待は高かったです。この曲は後からじわじわと上位に食い込んできた曲で、その要因は何だったかというと、ものすごく定常的でマットな*8ベースラインです。プログレッシブな方向に舵を切るアーティストが多い中で、トランスらしさとは何たるかを少し思い出させてくれた作品です*9。
7.Astronobios - Spider Web
この曲で初めて知ったネオゴアトランスのアーティストです。ネオゴアらしい、鋭く聴覚に切り込んでくるメロディーが曲全体で使われています。でもやはり魅力的なのはベースラインではないかと思います。聴き慣れている人には「低音弱い!」とか言われちゃいそうですが、そこがミソかと。メロディーが添加されていっても存在感を失わず、かつ曲全体を一つにまとめ上げる、奥深いベースラインではないかと思いますね。
6.Nova Fractal - Mass Extinction (Median Project Remix)
Nova Fractalによる原曲は、ゴアトランスというよりはユーロトランスに近い、和音とメロディーでガチガチに固めたトランスですが、高音域と低音域を使い分けるMedian Project*10の手によって空間効果を与えられ、ブレイクからの高揚感は原曲の何倍も強化されていて、良いリミックスになっています。ぜひ原曲との比較で聞いてみてください、私はどっちも買いました。
5.Memorio - This Forest Has No Trail
これはまた面白いフォレストに出会ってしまったなーという感じがしますね。フォレストサイケだとどうしても寒色系が多いのですが、Memorioのこの作品はどこか生暖かい感触があります。個々の音が溶け合ってできたような液状のベースラインと、始まりと終わりがはっきりしないパッド的なメロディーによるシナジーでしょうか。無料で入手できますがこれは課金する義務を感じましたね。
4.Maan - Mother Moss
サイケデリックトランスとゴアトランスの中間を攻めてきた面白い作品です。ベースラインから上澄の音域が分離していってメロディーとして曲を立ち上げていくところが技術を感じさせます。典型的なベースラインに囚われずにアルバム全体を仕上げていますし、どこかMan With No Nameに通じるところもあるかなーと個人的には思ってます*11。
3.Apach - Morgenstern
力強いキックと立体的なベースラインで構成される、絶妙な浅さのある空間的効果が最初の魅力です。その上に、ボーカルを千切って作成した効果音、トライバルなカウベル、不安感のあるメロディーを重ねていき、半透明な空気感を出していきます。信頼していいのか分からない中立的な精霊たちが空間を漂っているような、少しだけ不穏な空気感が印象に残りました。
2.Flowjob & Novotech - Let's Reconnect
一位の曲が出るまではこの曲が2020年のベストだと思っていました。アルバム紹介でもメンションしましたがFlowjobは優しさがあるプログレッシブサイケを作ってくれるアーティストなので、コロナで揺れる世界に対して希望的なタイトルを冠したこのトラックには色々と精神的に助けられた*12気がします。ついでにNovotechの株も大きく上がりましたね。
1.Bubble & Stayos - Search Yourself
弦楽器が得意なBubbleとボーカル加工で中毒性の高いリズムを作り出すStayos、聴く前から相当期待していました。その期待を上回るメランコリックで素晴らしい一作でした。サイケでは二箇所サビを設け、二回目を本命にするのが普通ですが、この曲では二回目が控えめかつお洒落です。コロナの閉塞感に対する処方箋としてのミドル系のプログレのベストは既に自分の中で決まっていた*13のですが、最後の最後で超えてきましたね。
以上で20曲ですが、この他にも2020年のオススメしたい曲はたくさんあります!それらに関してはぜひこちらのプレイリストを聞いてください。
また、2018・2019年の同様の記事は、カテゴリ「紹介-年別」から見ることができます。
2020年は特にゴアトランス方面でいくつか大きな動きがあった一年でした。残念ながらリリースが来年に持ち越されたアルバムもいくつかありました。パーティーの劇的な減少がこのジャンルに及ぼしうる影響を憂慮していますが、いつかまた踊れる日を夢見て、希望を持っていきたいですね。
では、また来年お会いしましょう!
*1:Kinematic RecordsからリリースされているデビューEP「Nuts & Bolts」は、Smilkに似た優しさと有機性があった。https://kinematicrecords.bandcamp.com/album/nuts-and-bolts
*2:これがうまいアーティストは貴重。
*3:最新アルバム「Simin」では従来のミドル系とはかなり違う方向に舵を切った。
*4:Roger Rabbitは低音を崩さない印象が強いです。
*5:604 RecordingsにはBell Size Parkなどがおり、元気のあるサイケをリリースしているから、そこでの作風と比べると落ち着いてるように聞こえた。
*6:低音の強さだけで見るとMillivoltが近いが、リズム感覚でMillivlotに勝てるZenonアーティストはなかなかいないかな。。
*7:Isostaticなど、かなりドローンに踏み込んだアーティストが多い印象だった。
*8:断じてつまらないという意味ではない。冗長性はトランスの醍醐味である
*9:Eternityにそういう意味が込められてたら?と考えると滾るね。
*10:ここで言わんとしていることは、こちらのアルバムでご確認いただけるかと。https://psytrance101.hatenablog.com/entry/median-project-in-the-depths-of-space
*11:MaanとMan With No Nameはリズムとメロディーを一致させてドライだけど粘着質な音を作り出す感じが似てる気がする。
*12:サイケデリックトランスを聞く人は何らかの救済を求めているんじゃないかという持論。
*13:2.のFlowjob & Novotech - Let's Reconnect。