Psykelopedia

サイケデリックトランスやゴアトランスの曲やアーティストをおすすめします。

透明水彩の空間画伯【Aes Dana】

どうもPsykeです。今回はAes Danaについて書いていこうと思います*1

Aes DanaことVincent Villuisはフランスのアーティストで、リヨンに拠点を置くレーベル「Ultimae Records」をSandrine Grysonと共同で*2設立しています。Solar Fieldsと組んだユニットHUVA Networkや、ASURAとしての活動でも知られており、2003年にデビューアルバム「Season 5」を発表しています*3

「透明」という言葉はFlucturion 2.0の紹介の時にも使いましたが、奥行き感を重視したメロディックなスタイルは、確かに似ています。違いはAes Danaの方がFlucturion 2.0よりも寒色系・空間系というところ、音質のレベルが格段に違うというところでしょうか。

Aes Danaは圧倒的な音響力で空気感を出すのが特に上手いです。そういう意味で最初に紹介したいのはLysistaraという作品。私が一番好きなAes Danaアルバム「Leylines」に収録されています*4。まずは聞いていただきたいです。

充実したアンビエントミュージックの空間を突如として強烈なキックが貫くというダイナミックな展開をする作品ですね。空間的な深度を味わわせてくれるだけでなく、彼の作品が持つエネルギーをよく代弁しています。アンビエントとサイトランスの間でAes Danaが起こすシナジーという意味で、これほど象徴的な作品は他にないと思います。

同じように独特の空気感を演出した曲としてHeaven Reportがあります。アルバム「Perimeters」に収録された一曲です。ジャケットが醸し出す雰囲気によく合致した曲ではないかと思います。樹木の間を通過して届く光子を表現したような電波的・粒子的な効果音に加え、樹木同士の会話に用いられる化合物が空間に充填されているような絶妙な半透明感がありますね。

少しテンポを落とした作品では、アルバム「Memory Shell」に収録されているOpalinも捨てがたい魅力があります。豊かに反響する上層音メロディーが、まさにShellの中に閉じ込められているような閉鎖性を生み出しますDreamstalkerのアルバム「Memory」に似た深層性ですね。

Lysistaraに見られたような強烈なエネルギーを秘めた作品もあります。例えばこちら、Manifold(Ground Edit)。Morning Editとセットになっていますが、Morning Editは優しい質感なのに対して、Ground Editは深く突き刺さるキックで強烈な推進力を生み出しています。捩れや汚さはないのですが、保有している内部エネルギーはサイケデリックトランスというよりゴアトランスに近いものがあります。

 

サイケデリックトランスと聞くとフルオンやダークサイケのような強烈なイメージが先行しますが、Aes DanaやSensientFlucturion 2.0Twinsonicのようにもっと上品な作品を作るアーティストがいることも、もっと知られて欲しいなと思います。

 

*1:Aes Danaの作品を網羅するには彼のアンビエントやテクノ作品にも注目しなければならないが、ここではAes Danaのサイケデリックトランス風の作品のみに着目する。

*2:https://www.psilowave.com/music-interviews/ultimae-records-interview-sandrine-gryson

*3:https://www.discogs.com/ja/artist/56495-Aes-Dana

*4:いずれ紹介予定