「プログレッシブサイケ」の定義に関する考察
どうも、Psykeです。
今回は、プログレッシブサイケに関する私の個人的な理解をアウトプットしてみようと思います。
現在プログレッシブサイケと呼ばれているものは、大まかに分けて4種類あると思います。
- イスラエルを中心とした勢力のクラシックなサイケもしくはフルオンの延長線上にある作品群
- イスラエルを中心とした勢力のバウンシーなベースラインを用いた作品群(マグネティックサイケ)
- ドイツを中心としたヨーロッパ勢力のオフビートサイケおよびその延長線上にある作品群
- 技巧を特徴としメロディー性を削ぎ落としたダークな作品群
順番に見ていきます。
- イスラエル中心・サイケ/フルオンの延長線上作品群
- イスラエル中心・マグネティックサイケ
- ドイツ中心・オフビートサイケ/その延長線上作品群
- 技巧を特徴としメロディー性を削ぎ落としたダークな作品群
- 一緒にどうぞ
イスラエル中心・サイケ/フルオンの延長線上作品群
IONO Musicのレーベルで活動するHasche、Flexus、Static Movement、Stayosなどのアーティストの作品がこれに該当します。特徴としては、以下のような点が挙げられます。
- イスラエル出身のアーティストがメイン
- ギャロップ型のベースラインを用いる
- BPMが遅め
- キックはあまり主張しない
- 曲の後半2/3あたりの位置のブレイクが見せ場で旋律性が豊か
- メロディーや和音を重視し、メランコリックな雰囲気を演出する
特に後の4つの点は、従来型のサイケと大きく異なる点ですね。
Infinity ProjectやGMSが定義した元気な音使いや捩れのある世界観という意味でのサイケ性は、この作品群では失われています。ただし、オールドスクールゴアトランス的な悲壮感のあるメロディーデザインやメランコリーは、むしろこの作品群では復活してきているように感じられます。
イスラエル以外の国では、Zyceを中心としたセルビアで少々このような動きが見られます。
また、このあと紹介する三番目のプログレッシブサイケとの融合を目指す動きも出てきています。
イスラエル中心・マグネティックサイケ
マグネティックサイケという名称は、私、Psykeが提案させてもらっているものです。
特徴を列挙するとこのような感じになります。
- ローリングベースにはない独特の膨らみのあるベースライン
- オフビート・ギャロップ・トリプレット等と異なる新しいリズム感覚
- 旋律の抑制
- 金属性の強い、鋭い上層効果音
- 粘性はあるがさっぱりとした雰囲気
例えばこんな感じ。
マグネティックサイケのスタイルがどのように形成されたのか、現時点では把握していません。聞く限りは他のサイケとの関係性は希薄そうです。しかし、Mindwave/SOME1を除き、マグネティックサイケの勢力は基本的にイスラエルのHOMmegaのレーベルに集中しています。イスラエルのサイケデリックトランスの中から派生してきたと考えるのが自然でしょう。
ドイツ中心・オフビートサイケ/その延長線上作品群
プログレッシブサイケと聞いたとき、これを連想される方が一番多いのではないでしょうか。
ドイツを本拠地とするBlue Tunes Recordsというレーベルがあります。レーベルオーナーはSymphonix。Fatali、Haldolium、NOK、Motion Drive、Phaxe、Pop Art、Time in Motion、Symphonix、Ranji、Metronomeなど、数多くのアーティストが名を連ねています。共通の特徴としては次のような点が挙げられます。
- オフビートとギャロップの両面的な性質を持つリズム感覚
- ベースラインの基本パターンから逸脱した独自のベースライン感覚を持つアーティストが多い
- ある程度メロディー性を重視する
例えばこんな感じ。
この曲のように、サイケデリックトランスの基本的なベースラインのパターンとは異なるリズムを用いることが非常に多いです。
Blue Tunesの誕生が2006年ですが、その頃はNOK、Osher、Montagu & Golkondaらによって、変化が少なく堅いスタイルの作品が数多く作られていました。それが徐々にソフトな方向に変化して現在のBlue Tunesの多様性に繋がっています。
技巧を特徴としメロディー性を削ぎ落としたダークな作品群
Sensientが率いるZenon Recordsがムーブメントの主体となっていることから、ゼノネスク(Zenonesque)とも呼ばれるジャンルです。北欧のミニマルなサイケデリックトランスに影響を受けたアーティストたちが引き継いでいる分野となっています。アーティストとしては、Sensient、Pspiralife、ETN、Kali、Tetrameth、Shadow FX、Lavr、Millivolt、Klipsun、Eleexr、Irukanjiなどがいます。
特徴を列挙するとこのような感じになります。
- 技巧性
- テクノとの親和性の高さ
- オフビート・ギャロップ・トリプレット等と異なる新しいリズム感覚の模索
- 旋律の抑制
ミニマルなサイケデリックトランスへのアプローチの系譜はこちらの記事でも言及しています。
一緒にどうぞ
更新履歴
<2022/10/10 ゼノネスクを4種類目として追加>