Psykelopedia

サイケデリックトランスやゴアトランスの曲やアーティストをおすすめします。

Egon’s Embraceの何が上手いのか

どうもPsykeです。今回は私が2021年のベストアルバムに選んだA Little Larger Than The Entire Universeの作者、Egon’s Embraceについて少し掘り下げていこうと思います。

記事の中でこんな一文を書きました。

Egon’s Embraceは世界観と物語性の豊かなダークサイケを作るアーティストで、A Little Larger Than The Entire UniverseはそのEgon’s Embraceの初のアルバムです。適度な捩れ感、必要箇所に必要な分だけちょうどよく挿入された効果音。今までシングルで発揮されてきた彼の独自性が、アルバムであることによって一気に高められたのではないかと思います。

このアルバムに限らずEgon’s Embrace作品でまず特徴的なのは、アルバムやトラックのタイトルの長さです。サイケデリックトランス曲やアルバムのタイトルは、大半のアーティストにとって基本的には言葉遊びの対象にすぎず、そこに深い意味を持たせているアーティストは少数派と言えます。実際私の脳内検索でもそのような深さを与えているアーティストだとKoanとEgon’s Embrace、欲張るならShpongleやLoud、くらいしか浮かんできません。KoanもEgon’s Embraceはある一点で共通していて、それは何かというと、いずれもかなり完成した内的世界観、ブレない軸を感じさせるという点です。無論サイケデリックである時点で一定の世界観を共有しているとも言えますが、KoanとEgon’s Embraceはそのさらに上をいったより深い世界観に到達している様に思えます。

音楽スタイルの観点からいくと、Koanは弦楽器を中心とした粘り気のある音遣いで独自の地位を構築しています。一方Egon’s Embraceは、フォレストサイケの基本的な考え方やEQバランスを継承しつつ、ある一点において他のダークサイケアーティストと明確に差別化している点があります。それはドラムスの考え方ですね。

極端な話、サイケは電子音楽であるゆえ、ドラムセットを使う必要もその奏法に従う必要もありません。ZyceDekelのようなアーティストはその制約を脱してトレードマークスタイルを構築しています。Egon’s Embraceの場合、奏法をある程度放棄しつつも、音としてはあくまで楽器に拘っている感があります。

なんだそれだけか、と思うかもしれませんが、ParvatiやSangomaやForestdelicで画一化したダークサイケを聴きまくってきた自分としては、先に述べたタイトルの意味深さと併せて考えても、Egon’s Embraceが新風であることは間違いないと断言できます。逆にこれに最初に慣れてしまうとなかなか他のアーティストを好きになるのも難しいです。

ダークサイケ、特にフォレストサイケは良くも悪くもなかなか時代的な変化やアーティスト間の差異がないジャンルで、どのアーティストやアルバムを優先的に紹介するかは私にとって難しい問題です。しかしその中でもEgon’s Embraceは先に触れておくべきでしょう。ダークサイケやフォレストサイケにもっと深くなれる余地があるということを、このアルバムは宣言している様に思えます。

 

自薦の関連記事

psytrance101.hatenablog.com

psytrance101.hatenablog.com

psytrance101.hatenablog.com

psytrance101.hatenablog.com

psytrance101.hatenablog.com